0葬(ゼロそう)ってどんな考え方?日本で一番ミニマルな弔い

      2016/06/03

「0葬(ゼロそう)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。宗教学者の島田裕巳氏が提唱している弔い方で、考えうる限りにおいて日本で一番シンプルかつミニマルな葬法です。今回は、0葬について解説します。

基本の0葬は「火葬場で収骨をしないこと」

長らく、葬儀と墓のあり方について問題提起してきた宗教学者の島田裕巳氏は、著書『0葬』(集英社)の中でこう記しています。「火葬」と「遺骨の埋葬」の2段構えが、「土葬」より合理性に欠けているとしたうえで、0葬の定義を示すのです。

火葬の場合にも、火葬した時点で終わりにしたらどうだろうか。
遺骨の処理は火葬場に任せ、それを引き取らないのである。
これは、土葬し終えた状態と同じになる。
それが、0葬である。(『0葬』p.178)

つまり、火葬場で最後のお別れをしたら、遺骨になった姿を見ることなく遺族はそのまま去るということです。遺骨を拾って骨壺に納める収骨をしません。お墓どころか、骨壺の必要すらありませんね。お墓について悩む必要は、一切なくなります。

「遺骨を火葬場へ置いたままにするなんて、できるのだろうか」と疑問に思う人もいるでしょう。その考え方は、火葬場によって違います。「何が何でも全部持って行ってもらう」というとことから、「喪主が一筆書けば引き取らなくてもOK」というところまで、さまざまです。

収骨の習慣は地域によって違います。関東以北はすべての遺骨を骨壺に納め、関西以西は3分の1ほどしか納めません。関西以西にも、部分的に全て収骨する地域はありますが、基本的にはこの構図が成り立ちます。よって関西以西の火葬場のほうが、柔軟に対応してくれる可能性があるでしょう。

火葬場の規定により全て収骨しなければならないところもありますから、0葬を望む人は、まずは近くの火葬場へ問い合わせてみましょう。

究極のシンプル葬は「直葬(ちょくそう)と0葬」

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さて、0葬は遺骨に対する弔い方ですが、火葬の前には遺体に対する弔いもあります。お葬式です。究極にあっさりした弔い方を望むなら、火葬の前に通夜や葬儀を盛大に行うのは、何か違う気がします。

お葬式を営まず、火葬場でお別れを言うだけの「直葬」という形式があります。「家族葬、直葬(ちょくそう)、密葬……葬儀の規模をあらわす4つのキーワード」でもお伝えしましたが、この直葬が、遺体にお別れをする形として一番シンプルなものです。

直葬と0葬を組み合わせれば、究極のシンプル葬が誕生します。通夜も葬儀もせず、親族たちは火葬場に行けばすべてが済んでしまいます。のちに納骨することもありません。

実際に、直葬と0葬を行うプランを提案している葬儀社が存在します。葬儀24ドットコムという葬儀社で、ここでは「直葬+0葬」のさらに上をいく考え方でプランが組まれています。依頼者は死亡届さえ記入・提出すれば、火葬場へも安置場所へも行く必要がないというのです。病院へ故人を迎えに行くところから、立ち会いなしで可能です(※病院側が了承した場合)。

火葬の後は収骨をせず0葬を、と希望する人のためのプランではありますが、火葬場の規定などにより希望に添えない場合があります。そんなときは、葬儀社員が収骨し、合葬や自然葬などを行ってくれます。

遺骨を引き取ることができないなど、やむにやまれぬ事情があるとき、遺骨を弔うまで主体的に面倒をみてくれる葬儀社なら安心ですね。こういったサービスは、これから増えていくでしょう。

関係性の多様化が葬法の多様化につながっている

非常にあっさりした弔い方である0葬には、賛否両論あるようです。「潔さが理想的」とする人から、「本人の希望があっても、遺骨がないのは寂しい」という人までさまざまですが、樹木葬や納骨堂、散骨などと同様に、一つのスタイルとして選択肢が増えるのは喜ばしいことでしょう。

日本人のライフスタイルが変容した結果、さまざまな親族の形が生まれています。自分が小さい頃に両親が離婚したため、連絡先さえ知らなかった父親や、一度も会ったことのなかった親戚など、いつ誰を引き取るようにと連絡があるか分かりません。

そういった事情のとき、遺骨の行方にはたいへん悩まされることでしょう。しかし、0葬が1つの弔い方として市民権を得れば、お墓について過度に悩まずに済むのです。もう、お墓で悩んでほしくない。0葬という考え方には、そんなメッセージが込められているのではないでしょうか。

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奥山晶子(おくやま・しょうこ)
奥山晶子(おくやま・しょうこ)
山形県生まれ。冠婚葬祭互助会で2年間働いた後、出版業に従事。出版社の社員時代に日本初の喪主向け葬儀実用誌『フリースタイルなお別れざっし 葬』を発行(不定期)。以後、葬儀や墓について紹介するライターへ。 著書に「葬式プランナーまどかのお弔いファイル」(文藝春秋)「終活」バイブル 親子で考える葬儀と墓 (中公新書ラクレ)などがある。2013年より2年間、「NPO法人葬送の自由をすすめる会」の理事を務める。現在は葬儀や墓についての知識を足掛かりに、介護、相続、遺品整理など終活関連すべてについて勉強・取材・執筆中。

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