散骨は違法?合法?「墓は心の中に」が市民権を得るまで

      2016/06/08

散骨は違法でしょうか、合法でしょうか。はっきり答えられる人はあまりいないでしょう。実は日本の法律に、散骨を禁止する文面はありません。それに気づいて闘ったのは、あるNPO団体です。日本初の散骨から、散骨が遺骨を弔う一つの選択肢となるまでの軌跡を解説します。

日本初の公開自然葬(散骨)は1991年に行われた

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1991年、「NPO法人葬送の自由をすすめる会」が相模灘で第1回公開合同自然葬を行いました。自然葬とは、同会の定義で「遺骨を自然に還す」こと。いわゆる散骨です。各メディアに取り上げられ大きな話題を生み、法務省は「葬送のための祭祀のひとつとして、節度をもって行われる限り」遺棄罪ではないという見解を述べました。

争点となったのは、「墓地墓埋等に関する法律(墓埋法)」です。墓埋法には、遺骨を埋める際にはそこが墓地として認められていなければならないとありますが、散骨する際にはどうするかの文面はありませんでした。そもそも墓埋法は散骨を想定して作られていないのです。

「自然に還りたい」という純粋な希望を叶えたい

法律が散骨を想定していなくても、散骨という風習は世界各地にみられ、日本にもかつてはありました。特に海へ遺骨を流す海洋散骨は、海の好きな人が憧れてもおかしくありません。しかし、長く「散骨は法律で禁じられている」と思い込まれていたのです。

実際、俳優の石原裕次郎さんが亡くなったときに「弟が愛していた海へ還したい」と兄の慎太郎さんが計画したものの、当時の法解釈により叶わなかったという経緯があります。

葬送の自由をすすめる会(以下すすめる会)は、1991年の公開自然葬の後もたくさんの海洋散骨を主催し、会員数を伸ばしていきます。ただ、「合法だから」とどこでもいつでも散骨をしていたのでは、いずれトラブルになり市民権を得られないでしょう。すすめる会では、トラブルを避けるためのオリジナルな工夫がなされました。

「葬送のための祭祀のひとつとして」「節度をもって」行う

Yacht sailing towards the sunset. Sailing. Luxury yachts.

法務省の見解をなぞれば、「葬送のための祭祀として」=弔いの気持ちを持って、「節度をもって」=マナーを守って散骨することが絶対条件となります。たしかに、弔いの気持ちを持たなければ、それは遺棄です。マナーを守らなければ、周囲に認めてもらえません。

すすめる会では、祭祀として行うために、自然葬(散骨)を行った地点では船からお花など自然に還りやすい供物を流し、またその場を3回旋回し、心静かに合掌するという手順を踏んできました。またマナー面では、遺棄と間違われないよう必ず粉骨する、船に乗り込むときには喪服を着ないなどの気遣いをしています。

ただ、このような心配りをもってしても、一番安上がりだからといったことを主な理由として散骨を選ぶ人はいなくなりませんし、散骨というだけで不快に思う人がいるのもしょうがないことです。常に深い理解を促してゆくしかないのでしょう。

散骨業者が次々と出現してきた

すすめる会が活動を始めてから、20数年が経過しました。その間に次々と散骨を行う会社が設立され、葬儀社が紹介業務を行うことも増えてきています。こうしてさまざまな業者が散骨ビジネスに参戦することで、散骨への理解はここ数年で急激に広がりを見せてきました。

ただ、新たな問題も生まれています。近隣住民との行き違いやマナー不足からトラブルが発生し、住民の希望から散骨禁止条例を敷く自治体があらわれてきたのです。このままマナーの悪い散骨が増えてしまえば、散骨を禁止する地域が徐々に増えていくことが予想されます。

世代を問わず、「いつかは海に還りたい」「自然に還りたい」という願いは絶えないものです。後世が自由な弔いを選べるように、今の散骨地点を守り、増やしていってほしいですね。

まとめ

違法ではないけれど、積極的に認められているわけでもない散骨は、まだまだ新しい葬法です。これから日本に散骨文化が根付いていくか、それとも滅びることになるのかは、周りから理解をいかに得られ、遺族がマナーをいかに守れるかにかかってくるでしょう。

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奥山晶子(おくやま・しょうこ)
奥山晶子(おくやま・しょうこ)
山形県生まれ。冠婚葬祭互助会で2年間働いた後、出版業に従事。出版社の社員時代に日本初の喪主向け葬儀実用誌『フリースタイルなお別れざっし 葬』を発行(不定期)。以後、葬儀や墓について紹介するライターへ。 著書に「葬式プランナーまどかのお弔いファイル」(文藝春秋)「終活」バイブル 親子で考える葬儀と墓 (中公新書ラクレ)などがある。2013年より2年間、「NPO法人葬送の自由をすすめる会」の理事を務める。現在は葬儀や墓についての知識を足掛かりに、介護、相続、遺品整理など終活関連すべてについて勉強・取材・執筆中。

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