相続財産を分ける時に気を付けたいこととは?

      2016/11/22

相続財産の分配については、相続人の範囲や相続の割合等を民法で細かく決められています。しかし、これはあくまでも「原則」であって、例外が存在することもあります。例えば相続人の1人が、被相続人から生前に財産の一部をもらっていた場合、民法の規定どおり、機械的に「何分の1ずつ」に分けたとしたら、他の相続人からクレームが来ることは、容易に想像できます。そこで民法では、このような時の調整方法についても規定されているのです。

特別受益と相続

特別受益とは?

例えば父親が亡くなり、相続人は長男のAさんと次男のBさんの2人だけだったとします。民法の規定では、被相続人(父親)の残した財産をAさんとBさんで「二分の一ずつ」に分けることになります。ところが、Aさんは私立大学を卒業し、Bさんは高卒で、父親がAさんの学費を全て出していた場合、規定どおり「二分の一ずつ」に分けるのはどうか考えても不公平です。

そこで民法では、この私立大学の学費について、被相続人からAさんへ「生前贈与」と考えるのです。また、被相続人が遺言書で「土地をAに相続させる」(これを「遺贈」と言います)という文言を書いていた場合、その他の財産をAさんとBさんで「二分の一ずつ」分けることも不公平です。

このように、被相続人から生前、あるいは遺言で財産をもらったり、結婚や養子縁組のために、または生計の資本として贈与を受けたりすることを「特別受益」と言います。先程の例で、大学の学費を取り上げましたが、学費も生計の資本となります。大学を出たことによって、高卒よりも高い賃金を受け取ることができるという考え方です。その他にも、自営業を行う際に、最初の運的資金を援助した等の場合も、生計の資本となります。

民法では、この「特別受益」を受けた相続人と受けていない相続人とのバランスを取り、不公平が生じないための規定を設けています。
 

特別受益の計算方法とは?

相続人の中に、この「特別受益」を受けた人がいる場合には、その分を考慮して財産を分配することになります。
  
具体的な計算方法としては、まず相続開始時の財産に「特別受益額」を足して「相続財産」とみなします。そして、これに法定相続分を適用して財産を分け、各相続人の「仮の取得財産価額」を計算します。そして、特別受益を受けた相続人については、先程出した「仮の取得財産価額」から、特別受益額を引くのです。

例えば、被相続人が実際に残した財産が現金のみで「2,000万円」とします。そして、Aさんが被相続人に出してもらった学費が、「600万円」だとします。まず

2,000+600=2,600万円

と計算し、この額がAさんとBさんに残された相続財産とみなすのです。

そしてこれを、民法どおりに「二分の一ずつ」に分けます。Aさん、Bさんともに「1,300万円ずつ」になりますが、Aさんは既に生前贈与で「600万円」もらっていることになりますから、実際には

1,300−600=700万円

を相続することになります。一方Bさんは、そのまま「1,300万円」を相続します。

寄与分と相続

寄与分とは?

例えば父親が亡くなり、相続人は長男のAさんと次男のBさんの2人だけだったとします。民法の規定では、被相続人(父親)の残した遺産をAさんとBさんで「二分の一ずつ」分けることになります。しかし、Bさんは遠隔地で会社員をし、Aさんは実家に残って、長年父親の農業を手伝い、特に給料のようなものをもらっていないとします。

この場合、相続財産を規定どおり「二分の一ずつ」に分けるのは、どうか考えても不公平です。そこで民法では、財産の維持・増加に特別な貢献をした相続人がいる場合、その人の分配を多くすることが認められています。これを「寄与分」と言います。

寄与分の計算方法とは?

「寄与分」がある場合には、財産の分配は、相続開始時の財産から寄与分を引いた額を相続財産とみなします。そして、これに法定相続分を適用して財産を分け、「仮の取得財産価額」を出します。そして、寄与分を受けた相続人は、「仮の取得財産価額」に寄与分を加算するのです。

例えば、被相続人が実際に残した財産が現金のみで「2,000万円」とします。そして、Aさんが長年父親の農業の手伝いをした寄与分を「600万円」だとします。まず

2,000−600=1,400万円

として、この額がAさんとBさんに残された相続財産とみなします。そしてこれを、民法どおりに「二分の一ずつ」に分けるのです。Aさん、Bさんともに「700万円ずつ」になりますが、Aさんは寄与分が「600万円」ありますから、実際には
700+600=1,300万円

を相続することになります。一方Bさんは、そのまま「700万円」を相続します。

この「寄与分」については、相続人の話し合いで決めることになりますが、金額として「寄与分」が幾らになるかを決めるのは、決して容易ではありません。もし、相続人の話し合いで決まらない場合には、寄与分を受け取る相続人(「寄与者」と言います)が、家庭裁判所「審判」の請求をして、判断してもらうことになります。

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福岡 學
 熊本県出身。福岡大学法学部法律学科卒。現在、福岡市で行政書士事務所を開業しています。相続・遺言、民事法務(内容証明・契約書・離婚協議書等)、公益法人などが専門分野です。また過去に、福岡県内の大手学習塾で20年間国語・英語の教科指導を担当し、国語科副主任、教務主任などを歴任しました。身近な法律問題、教育問題について、専門知識、過去の経歴を活かし、丁寧で分かりやすく説明いたします。

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