これだけは知っておこう!「秘密証書遺言」

      2016/07/27

遺言と言えば「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がよく知られています。しかし、実はもう一つ「秘密証書遺言」というものがあるのです。詳しくご紹介します。

「秘密証書遺言」の作り方とは

公証人・証人とは?

「自筆証書遺言」は、自分で遺言書を書き、署名・押印をして、家族や第三者に全く知られることなく、作成できるものです。自分の思いのままに、相続財産の処分を指定でき、しかも秘密は守られるというメリットがある反面、遺言書に一つでも法的な不備があれば、全て無効になってしまい、場合によってはその「遺言書」がもとで紛争の種になりかねないというデメリットがあります。

一方「公正証書遺言」は、専門家である公証人に作成をお願いし、法律的に問題のない「遺言書」ができるという反面、公証人はもちろん、立会人である第三者に「遺言書」の中身が知られてしまうというデメリットもあります。

そこで、この両者のメリットを併せた「秘密証書遺言」が考え出されました。具合的な手順は次のとおりです。
  

  ➀ 遺言者が、遺言書に署名・押印する。
  ➁ 遺言書が、証書を封筒に入れ、遺言書に押印した印鑑で封印する。
  ➂ 遺言者が、公証人1人と証人2人以上の前に提出し、遺言者が自分の遺言書である旨と自分
   の氏名・住所を述べる。
  ➃ 公証人が、遺言書が提出された日付と遺言者の申出を「証明書」に記載し、遺言者・証人
   とともに署名・押印する。

「自筆証書遺言」は、遺言者が自分で全ての文書を書く必要がありますが、「秘密証書遺言」は必ずしも自筆である必要がなく、パソコンで作成しても構いません。また、遺言書はあらかじめ遺言書を封書に入れていますから、公証人や証人に遺言書の内容を知られることはありません。「公正証書遺言」の場合、遺言の内容は公証人や証人の前で、口述することになっていますから、いくら第三者と言っても、遺言書の内容が知られることになります。

変更はできるのか?

「自筆証書遺言」は、「捨印」を押印するなどの一定の手続きを踏めば、内容の変更ができます。あるいは、全く違う内容の遺言書を作成し、作成日が確定することで、新しい「遺言書」が有効になり、同時に古い「遺言書」は無効となります。

「秘密証書遺言」の場合、遺言書の追加・削除などの変更は、遺言者がその場所を指示して、変更した旨を付記して、これに署名をし、変更場所に押印しなければ無効となります。なお、遺言書を作成し、方式上の不備があった時には、それが「自筆証書遺言」の方式を満たしていれば、「自筆証書遺言」として有効になります。
  

「秘密証書遺言」のメリット・デメリット

メリットとは?

  「秘密証書遺言」のメリットは、次の3つです。
   

   ➀ 遺言内容を秘密にできる。
   ➁ 偽造・変造の恐れがない。
   ➂ 文字を書けない人でも作成できる。

 「秘密証書遺言」の最大のメリットは、家族はもちろん、第三者にも遺言の内容を秘密にできるということです。一方で、「遺言書」の存在については、公証人や証人が確認していますので、「自筆証書遺言」のように、相続トラブルに発展する可能性は高くありません

「秘密証書遺言」は、遺言者が遺言を書いた後に自分で封印し、公証人や証人が署名・押印するものです。ですから、封が開いていたり、開けられた形跡があったりした場合には、「秘密証書遺言」としては無効となります。従って、後で「遺言書」を偽造や変造はできない仕組みになっています。

また、「秘密証書遺言」は「自筆証書遺言」とは違って、自分で書く必要はありません。パソコンを使ったり、他人に代筆してもらったりすることも可能です。ただし、署名や押印は自分で行わなければなりません。ですから、高齢などの理由で文書を自分で書くことが難しい人でも、「秘密証書遺言」であれば、作成することができるということです。
  

デメリットとは?

「秘密証書遺言」のデメリットは、次の3つです。
   

   ➀ 手続きがやや煩雑である。
   ➁ 遺言書が発見されない可能性がある。
   ➂ 遺言が無効になる可能性がある。
   ➃ 家庭裁判所の検認が必要である。

「秘密証書遺言」は遺言者が遺言書を記載し、その存在を公証人や証人に認めてもらうものですが、当然公証人や証人に対する費用がかかります。もちろん「公正証書遺言」ほどではありませんが、「自筆証書遺言」よりも手続きは煩雑です。

「公正証書遺言」は、控えを公証役場に保管しますが、「秘密証書遺言」は遺言者本人が保管するしかありません。ですから、遺言者が亡くなった後に発見されない可能性があります。せっかく作った「遺言書」ですが、誰にも「遺言書」の存在を知らせていなかった場合には、「遺言書」そのものが発見されない恐れもあります。

「秘密証書遺言」の場合、公証人や証人は「遺言書」の内容にはタッチせず、存在だけを認めるだけです。ですから、法的な様式・形式を備えていないで、遺言そのものが無効に可能性もあります。もちろん、「筆証書遺言」としての方式を満たしていれば、自筆証書遺言は認められる場合があります、「秘密証書遺言」と「自筆証書遺言」の方式は違う点もありますので、全ての遺言が「自筆証書遺言」として認められるわけではありません。

また、「公正証書遺言」であれば、遺言者が亡くなった後、「遺言書」を開封して相続手続きに入れますが、「秘密証書遺言」は「自筆証書遺言」と同じく、開封をせずに家庭裁判所で「検認」の手続きを受けなければなりません。「検認」とは、遺言者が最後に住んでいた住所を管轄する家庭裁判所に「遺言書」を持って行き、基本的に相続人全員前で、家庭裁判所の職員が開封するというものです。ですから、相続手続きは多少時間がかかるということになります。

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福岡 學
 熊本県出身。福岡大学法学部法律学科卒。現在、福岡市で行政書士事務所を開業しています。相続・遺言、民事法務(内容証明・契約書・離婚協議書等)、公益法人などが専門分野です。また過去に、福岡県内の大手学習塾で20年間国語・英語の教科指導を担当し、国語科副主任、教務主任などを歴任しました。身近な法律問題、教育問題について、専門知識、過去の経歴を活かし、丁寧で分かりやすく説明いたします。

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