これだけは知っておこう!「自筆証書遺言」

      2016/07/26

「遺言書」の中でも、最も身近で手軽なものが「自筆証書遺言」です。紙と封筒、ペンと印鑑があれば、だれでもどこででも作成できるからです。しかし、その手軽さゆえに「民法」では様々な規定が定められています。「自筆証書遺言」の作成方法やメリット・デメリットについて、説明します。

「自筆証書遺言」の作り方とは?

遺言で指定できることとは?

遺言とは、相続人や遺贈者(相続人以外に財産を残す人)に伝える最後のメッセージです。ですから、基本的にメッセージは何でもいいのですが、主に次の二つを指定します。

  ➀ 相続分の指定
  ➁ 分割方法の指定

遺言者は、自由な意思により遺言書を作成することができます。その中で指定された「分配方法」は、遺留分を侵害しない限り、民法で決められている分け方(「法定相続分」と言います)よりも優先されます。つまり、遺言者の意思を尊重して分割されるということで、それほど遺言の効果は絶対的だということです。
なお「遺留分」とは、残された相続人の生活を保障するために、兄弟姉妹以外の法定相続人が最低限相続できる遺産の割合のことです。

法定相続人以外にも?

遺言書がない場合、法定相続人が話し合って、民法で定められた「法定相続分」で遺産を分けるのが理想ですが、遺産の中には分割しにくい不動産(家、土地)があったり、あるいは様々な事情から話がまとまらなかったりする場合が少なくありません。よく言われるように「相続」が、親族間の争いの種になる「争族」になる可能性が出てきます。

しかし、遺言は被相続人の最終的な意思ですから、相続人は遺言の内容を受け入れてくれることになり、相続で相続人同士の争いを避ける効果があります。また遺言は、そのような「争族」防止になるだけでなく、被相続人に次のような考えががある場合も有効です。

  ➀ 「家」や「事業」を守るために、長男など特定に相続人に財産を譲る。
  ➁ 相続人が配偶者と兄弟姉妹になるとき、すべての財産を配偶者に譲る。
  ➂ 相続人でない者に財産を譲る。
  ➃ 相続人が誰もなく、お世話になった他人に財産を譲る。

  

「自筆証書遺言」のメリット・デメリット

メリットとは?

  「自筆証書遺言」のメリットには、次の3つがあります。
 

   ➀ いつでもどこでも作成することができる
   ➁ 証人を必要とせず自分一人でできる
   ➂ 特別な費用がかからない

「自筆証書遺言」は、自分が「遺言書」を書こうと思った時に、場所に関わりなく、作成することができます。極端な話ですが、便せん、封筒、ペン、印鑑があれば、15歳以上であれば誰でも書くことができます。また、「公正証書遺言」の場合は、公証役場で公証人に作成してもらい、2人以上の証人(立会人)の下、署名押印が必要ですが、「自筆証書遺言」の場合、第三者に遺言書の内容を知らせることはなく、従って相続人などに漏れることはありませんから、秘密を守ることができます。

さらに、「公正証書遺言」であれば、公証人に支払う費用などが発生してきますが、「自筆証書遺言」であれば、先程説明したように便せん、封筒など自分の現在手元になるもので作成でき、ほとんど費用がかかりません

デメリットとは?

 一方、「自筆証書遺言」のデメリットには、次の3つがあります。
  

  ➀ 様式の不備や内容の不備が発生しやすい
  ➁ 相続開始時に家庭裁判所の検認を受けなければならない
  ➂ 偽造、変造、紛失の可能性がある

  
「自筆証書遺言」の様式については、民法で厳格に規定されています。まず、遺言の内容については、遺言者が全て自筆しなければなりません。一部でもパソコンで文書を作成したら、無効になってしまいます。また、作成した日付を記載しておかなければなりません。この日付も、「平成28年7月大安吉日」など、特定できない日は無効です。平成28年7月には「大安」の日が何日もあるからです。ですから、特定できる「平成28年私の誕生日に記す」と書いても有効になりますが、できれば「平成28年7月7日」と明記した方が良いでしょう。

また、署名した上で、印鑑を押さなくてはなりません。印鑑は実印でも認印でも構いませんが、サインはたとえ本人が普段使用していたとしても、無効になります。平成28年6月最高裁で、遺言者が花押(戦国武将などが使っていたサイン)を印鑑の代わりに使っていた遺言書に対して、「無効」との判断を示しました。以上の様式が、一つでも守られていないと、全て無効になってしまいます。

「自筆証書遺言」は、相続人が亡くなったからといって、勝手に封を開けてはいけません。そうしておかないと、内容を勝手に変更される場合があるからです。まず、被相続人が最後に住んでいた住所を管轄する家庭裁判所に持って行き、基本的に相続人全員前で、家庭裁判所の職員が開封することになっています。これを「検認」と言います。

この手続きは、相続人に対して、遺言の存在やその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加筆・削除の状態、日付、署名などを、明確にして、遺言書の偽造変造を防止するためのものです。それほど「自筆証書遺言」は、偽造、変造の危険にさらされているという表れでもあります。

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福岡 學
 熊本県出身。福岡大学法学部法律学科卒。現在、福岡市で行政書士事務所を開業しています。相続・遺言、民事法務(内容証明・契約書・離婚協議書等)、公益法人などが専門分野です。また過去に、福岡県内の大手学習塾で20年間国語・英語の教科指導を担当し、国語科副主任、教務主任などを歴任しました。身近な法律問題、教育問題について、専門知識、過去の経歴を活かし、丁寧で分かりやすく説明いたします。

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