これだけは知っておこう!「公正証書遺言」

   

「公正証書遺言」は、「自筆証書遺言」に比べて費用はかかりますが、確実で相続手続きに関してもトラブルが発生することが少ない遺言書だと言われています。ですから、最近は「公正証書遺言」を作成する人が増えていますが、意外とその手続きやメリット・デメリットは知られていません。今回は、「公正証書遺言」について詳しくご紹介します。

「公正証書遺言」の作り方とは?

公証役場とは?

「公正証書遺言」は、遺言者が公証人に遺言内容を口述し、口述された内容を基に公証人が遺言書を作成するものです。公証人は、公証役場で「公正証書遺言」を作成しますが、一般の人には「公証役場」と言われても、あまり馴染みがありません。しかし、「公証役場」は私たちの生活に大きな役割を果たしています。

具体的には、公証役場で契約書や遺言書を作成してもらい、その内容をチェックしてもらった上で、その内容を保証してもらうのです。また、「公証人」は、主に裁判官や検察官の経験者が選ばれていますから、「法律のプロ」の立場から契約書や遺言書の内容を吟味します。ですから、公証役場で公証人に作ってもらう「公正証書遺言」は、かなり信用性が高いということが言えます。

なお公証役場は全国にあり、「日本公証人連合会」のホームページで最寄りの公証役場を探すことができます。また、遺言書を作成する場合、特に近くの公証役場で行わなければならないという規則はありませんから、全国どこの公証役場を利用することができます。

証人とは?

「公正証書遺言」を作成するには、次の5つの条件を満たすことが必要です。
  

  ➀ 証人2人以上の立ち会いがあること
  ➁ 遺言者が遺言の内容を公証人に口述すること
  ➂ 公証人が、遺言者が口述した内容を筆記した上で、遺言者と証人に読み聞かせを行
   うこと
  ➃ 遺言者と証人が、筆記された遺言内容を確認して、それぞれ署名・押印すること
  ➄ 公証人が、最後に署名・押印すること

「公正証書遺言」では、公証人以外にも2名以上の証人が必要ですが、誰でもいいというわけではありません。次の人は、証人になれないことになっています。
  

  ➀ 未成年者
  ➁ 推定相続人(遺言者が亡くなったら相続人になれる立場にある人)、受遺者(遺言により
   財産を貰う人)及びその配偶者並びに直系血族 
  ➂ 公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び雇い人

以上のように、遺言者や遺言内容とかかわりがなく、利害関係がない人を証人として選ぶ必要があります。

実際の手順としては、遺言者が公証役場に来る当日に遺言書を完成させることはなく、あらかじめ遺産のリスト、不動産登記簿謄本、戸籍謄本などを遺言の原案を郵送などで公証人に送っておきます。その後、電話などで打ち合わせを行い、遺言内容をきちんと詰めておきます。そして当日には、公証人が作成しておいた遺言書を遺言者に読み聞かせ、意思確認と署名・押印という流れになります。

なお、遺言者が実際に公証役場に行くことが基本ですが、現実的に遺言者が病院などの理由で、公証役場に行けないこともあります。そこで、そのような人のために、出張費はかかりますが、公証人が自宅や病院などに来てくれる制度もあります。
  

「公正証書遺言」のメリット・デメリットとは?

メリットとは?

 「公正証書遺言」のメリットは、次の4点です。
  

  ➀ 遺言者は口述するだけで良い 
  ➁ 公証人という「法律のプロ」が作成してくれる
  ➂ 遺言の保管が確実で、紛失、変造の心配がない
  ➃ 家庭裁判所の検認が要らない

  
「公正証書遺言」は、自分で作る「自筆証書遺言」と違って、法律の専門家である「公証人」が作ってくれますので、遺言内容の不備が発生することはありません。遺言者は、基本的に公証人に遺言書の作成を任せて、口述、署名・押印すればいいのです。しかも、「公正証書遺言」は「控え」を公証役場で保管しますから、もし遺言者が遺言書をなくしても、公証役場に請求すれば、遺言内容を知ることができます。また、「控え」が公証役場に残っていますから、偽造される危険もありません。

「自筆証書遺言」の場合、遺言者が亡くなったら、遺言書を開封することなく、家庭裁判所に提出する必要があります。そして、基本的に相続人全員立会いの下、家庭裁判所の係員が開封し、遺言内容を確認してもらう必要があります(これを「検認」と言います)。しかし、「公正証書遺言」の場合にはこの「検認」の手続きを行う必要はなく、遺言者が亡くなった後は、すぐに相続手続きを行うことができます。

デメリットとは?

「公正証書遺言」のメリットは、次の3点です。
   

   ➀ 2人以上の証人が必要である。
   ➁ 手続きが面倒であり、手数料がかかる。
   ➂ 遺言内容が秘密にできない。

 
先程説明したように、証人は遺言者と利害関係がない人を選ぶ必要があります。もし、思い当たる人がいない場合は、公証役場が用意してくれますが、一人当たり7,000~8,000円程度の費用が必要です。

また、遺言書の原案を公証人とやりとりしたり、実際に公証役場に行ったりするなど、手続きが煩雑で費用もかかります。さらに、自分一人で作成できる「自筆証書遺言」とは違って、「公正証書遺言」の場合は公証人や証人が遺言内容を知ることになり、秘密にできないといいうデメリットもあります。

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福岡 學
 熊本県出身。福岡大学法学部法律学科卒。現在、福岡市で行政書士事務所を開業しています。相続・遺言、民事法務(内容証明・契約書・離婚協議書等)、公益法人などが専門分野です。また過去に、福岡県内の大手学習塾で20年間国語・英語の教科指導を担当し、国語科副主任、教務主任などを歴任しました。身近な法律問題、教育問題について、専門知識、過去の経歴を活かし、丁寧で分かりやすく説明いたします。

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