人に教えたくなる「相続人」、「被相続人」の基礎知識

      2016/07/26

「相続」に関する本や資料を読むと、「相続人」と「被相続人」という言葉が頻繁に登場します。この2つの言葉は、相続を考える上で基本中の基本ですが、改めて具体的にどういう意味なのかを問われると、意外と答えられないものです。今回は、そのような相続の基本、「相続人」と「被相続人」についてご説明します。

相続人の基礎知識

相続人とは?

 
亡くなった方の財産上の地位を全て受け継ぐ人を「相続人」と言います。その中でも特に、民法で決められている相続人を「法定相続人」と言います。

相続人には、「血族相続人」「配偶者たる相続人」の2種類があります。血族相続人とは、自分の親や子ども、兄弟など血のつながりのある人のことです。離婚した場合、たとえ別居していても子どもには相続権があります。「配偶者たる相続人」とは、結婚した相手方のことですが、離婚すれば当然、相続権はなくなります。但し、何十年も別居していて、実質的に結婚しているとはいいがたい状況でも、正式に離婚しないかぎり、配偶者に相続権はあります。

相続順位とは?

民法では、相続人と併せて「相続人の順位」も決められています。まず、「配偶者」は常に相続人となります。また、「血族相続人」は、次のように順位が決められています。なお、文中の「被相続人」とは、亡くなった人のことです(後で詳しく説明します)。
人に教えたくなる相続人被相続人の基礎知識

➀ 第一順位 被相続人の子と孫以下の直系卑属
➁ 第二順位 被相続人の直系尊属
➂ 第三順位 被相続人の兄弟姉妹とその者の子

 

➀は、亡くなった人の子ども、子どもがいない場合はその子ども(つまり孫)というように、下の代へ下りていきます。もし、➀に当たる人がいない場合は、亡くなった人の親、親がいない場合はその親(つまり祖父母)というように、上の代に上がっていきます。さらに、➁に該当する人がいない場合は、亡くなった人の兄弟や姉妹、もしいなければその子ども(つまり甥や姪)となります。

相続財産とは?

前の箇所で、相続人は亡くなった「財産上の地位」を全て引き継ぐと説明しましたが、それを専門用語で、「相続財産」と呼びます。財産上の地位ですから、亡くなった人が持っていた現金、預貯金、あるいは家や土地などの不動産全てです。またそれに加えて、借地権、借家権、著作権などの権利も受け継ぐことになります。さらに亡くなった人が、他人の不法行為(交通事故など)で損害を受けて死亡した場合でも、本人が受けた精神的苦痛に対する「損害賠償請求権」も受け継ぐことになります。つまり、亡くなった人の権利を相続人が受け継ぎ、加害者に請求するという仕組みです。

但し権利の中でも、次の3つは引き継ぐことができません。

➀ 被相続人の一身に専属する権利
➁ 祭祀財産
➂ 相続人が固有に取得する権利 

➀は、被相続人がその人に限って持っていた権利で、例えば、身元保証人、委任者・受任者としての権利などで、あくまでもその人(被相続人)の信用や地位で得た権利がそれに当たります。ただ、金銭消費貸借や賃貸借契約などの保証人の権利は、相続人が受け継ぐことになります。➁は、位牌、仏壇、墳墓などで、これは個人所有という考え方がないというのがその理由です。➂は、例えば被相続人が生命保険に加入していて、保険金の受け取りを一人の相続人に指定していた場合とか、被相続人が会社員だった場合に遺族が受け取れる「死亡退職金」がそれに当たります。
 

被相続人の基礎知識

被相続人とは?

相続人とは、亡くなった人の財産を引き継ぐ人のことですが、「被相続人」とは相続される側、つまり亡くなった人のことを指します。相続は、人が死亡することで開始し、一般的に戸籍に記載された死亡日が死亡の時と推定されますから、その死亡日が相続開始日になります。

 相続開始日は、その後の「相続放棄」や「相続税」の申告の手続きなどに関わってきます。従って、いつ相続が開始されたかは、相続人の間では重要です。

相続の始まり

被相続人の死亡と一言で言いましたが、民法では「死亡」についての定義を次のように分けています。
 

➀ 自然死亡
➁ 失踪宣告
  1) 普通宣告
  2) 危難宣告

  
➀の自然死亡は、病気や事故で人が亡くなる場合です。一般に使われる「自然死」(外傷や病気ではなく、加齢による老衰死)ではありません。医師が臨時に立ち会い、死亡の日時が確定します。医師がいない場合は、警察が取り調べを行い、死因や死亡した日時を確定することになります。

➁の「失踪宣告」は、家族などの請求によって、行方が長年不明な人に対して、家庭裁判所が行うものです。1)は、不在者の生死が7年以上明らかでない場合に、適用されます。この普通失踪が認められると、7年間の期間が終了した時点で、死亡したものとみなされます。2)は、戦地に臨んだ人、沈没した船舶に乗っていた人、その他死亡の原因となる危難に遭遇した人の生死が1年以上明らかでない場合に、適用されます。この危難宣告が認められると、危難が去った時に死亡とみなされます。

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福岡 學
 熊本県出身。福岡大学法学部法律学科卒。現在、福岡市で行政書士事務所を開業しています。相続・遺言、民事法務(内容証明・契約書・離婚協議書等)、公益法人などが専門分野です。また過去に、福岡県内の大手学習塾で20年間国語・英語の教科指導を担当し、国語科副主任、教務主任などを歴任しました。身近な法律問題、教育問題について、専門知識、過去の経歴を活かし、丁寧で分かりやすく説明いたします。

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