あなたの身近にある「相続トラブル」とは?

      2016/06/14

今まで仲が良かった兄弟が、親の死をきっかけに「骨肉の争い」を演じると言った「相続トラブル」は、ドラマや小説の世界に限ったことではなく、社会にも数多く発生しています。「うちは兄弟の仲が元々良いから」、「うちの親には多額の財産はないから」など、他人事と思っているかも知れませんが、兄弟仲や相続の財産の多寡にかかわらず、「相続トラブル」は誰にも、どんな家庭にも起きる可能性があるのです。そのような「相続トラブル」を、「財産編」と「相続人編」に分けてご紹介します。

意外と多い「相続トラブル」(財産編)

相続財産が分からない!

 
親が亡くなった際に、多くの場合その子どもが「相続人」となります。この時、亡くなった親は「被相続人」と呼ばれます。被相続人の財産を相続人である子どもたちが、相続することになるのですが、被相続人の財産をまとめた「財産目録」を被相続人が作っていない場合、相続人である子どもたちが相続財産を調べて、「財産目録」を作らなくてはなりません。

相続財産のうち不動産は、毎年市区町村から送られてくる「固定資産税納税通知書」を確認すれば、ほぼ確実に把握することができます。しかし、現金や預貯金をすぐに全て把握することは、意外と困難です。なぜなら、銀行などの金融機関から定期的に文書が送られてくることは、ほとんどないからです。そこで、相続人としては、残された預金・貯金通帳などを探して、預貯金の額を調べることになります。
封筒に書類

多額の借金があった!

また遺産は、プラスの財産だけではありません。マイナスの財産、つまり被相続人の残した「借金」も相続人が受け継ぐことになります。金融機関からの借金であれば、預金・貯金通帳や証書などで把握できますが、それ以外個人などからの借金の場合には、貸主が申し出ない限り、借金の金額や残金などを確定することは、かなり難しいのが現実です。

さらに、借金が多額で相続財産の額を超えることが見込まれる場合には、「相続放棄」を検討しなければなりません。いずれにしても、被相続人には借金があるのか、あるとしたら総額はいくらになるのか、早急に把握する必要があります。そうしないと、相続人は遺産分割協議を開始できないということになります。

相続財産は不動産だけ

2015年(平成27年)1月1日に、相続税に関する法律が改正されました。今まで「相続税を支払う世帯はお金持ちだけ」という考え方が一般的でしたが、今回の改正で「控除額」が引き下げられた結果、今まで相続税とは無縁だった家庭にも、「相続税」の問題が持ち上がってくる可能性が出てきました。

控除額とは、相続税がかからない相続財産額のことです。改正前の控除額は

5,000万円+1,000万円×法定相続人数

でしたが、改正後は
3,000万円+600万円×法定相続人数

となりました。
例えば、相続財産額が7000万円、法定相続人が3人(配偶者、子2人)だとします。改正前でしたら控除額は、
5,000+1000××3=8,000(万円)

となり、相続財産額が控除額を下回りますから、相続税はかかりません。しかし、改正後の控除額は、
3,000+600×3=4,800(万円) 

となり、相続財産額が控除額を上回りますので、上回った
7,000-4,800=2,200(万円)

に対して課税されます。参考までに2,200万円にかかる相続税は、「税率15%」ですから、
2,200×15%=330(万円)

となり、330万円を相続税として納めなければなりません。
ここで問題になってくるのが、相続税の納め方です。基本的に、相続が開始して(被相続人が亡くなって)、10ヶ月以内に税務署に申告をして、現金で一括払いをしなければなりません。もし相続財産のほとんどが不動産で、現金や預貯金がなかった場合、不動産を処分するなどの方法で、相続税を支払うための現金を作らなければなりません。
現金札束

意外と多い「相続トラブル」(相続人編)

相続人が多い

被相続人が亡くなった場合、相続人は基本的に配偶者とその子どもたちになります。しかし、子どもがいなければその子(被相続人の孫)、子どもの孫もいなければ被相続人の親、そして親もいなければ被相続人の兄弟、というように次々の相続人の範囲が広がってきます。さらに、被相続人が再婚だった場合には、先妻との間の子どもも相続人になります(先妻には相続権はありません)。

このように、一言で「相続人」と言っても、被相続人の家族関係、婚姻歴などによって、相続人の数や範囲が変わってきます。相続が始まった(被相続人が亡くなった)時点で、まず「相続人」を確定しなければなりません。具体的方法としては、「被相続人の出生から死亡までの一続きの戸籍謄本」を取り寄せることになります。そこで初めて、新たな相続人の存在を知る場合も少なくありません。いずれにしても、遺産分割協議は基本的に相続人全員が一堂に会して行うのが原則ですから、相続人の数が多く、しかも遠隔地にいる場合には、全相続人の合意を得るのは、一苦労と言わざるを得ません。

協議が整わない

相続が開始して、遺言書がなかった場合には、相続人全員で「遺産分割」の協議を行わなければなりません。この協議が整えば、「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名し、捺印することになります。もし相続人の中の一人でも反対すれば、協議は不調に終わることになります。従って、相続人全員が納得した遺産分割を行うことが大前提です。相続財産のうち、現金や預貯金が少なくほとんどが不動産の場合には、遺産分割協議がなかなか整わない可能性が高くなります。

しかし、相続税の支払期限は、被相続人が死亡して10ヶ月以内ですから、それほど時間に猶予があるとは言えません。仕事を持った相続人や遠隔地に住む相続人がいる場合には、何回も協議を行うことは厳しいかも知れません。

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福岡 學
 熊本県出身。福岡大学法学部法律学科卒。現在、福岡市で行政書士事務所を開業しています。相続・遺言、民事法務(内容証明・契約書・離婚協議書等)、公益法人などが専門分野です。また過去に、福岡県内の大手学習塾で20年間国語・英語の教科指導を担当し、国語科副主任、教務主任などを歴任しました。身近な法律問題、教育問題について、専門知識、過去の経歴を活かし、丁寧で分かりやすく説明いたします。

 - 相続のいろは