今さら聞けない「遺言書」の基礎知識

   

「終活」という言葉が、初めてマスコミに登場したのは、2009年です。自らの葬儀やお墓の準備を生きているうちに行って、残された家族に迷惑がかからないようにするという記事が、この年に初めて週刊誌で特集されたのです。現在では、すっかり「終活」という言葉は定着しています。

そんな中で、それまであまり注目されなかった「遺言書」に関して、多くの人が関心を持つようになり、「遺言書キット」が大手文具メーカーから発売され、ベストセラーになったほどです。ただ、このようにブームになった「遺言書」ですが、その基礎的な知識は意外と知られていません。今回は、知っておくべきだけれど、今さら人には聞けない「遺言書」の基礎知識をそっと教えます。これを知っておけば、明日誰かに教えたくなります。

そもそも遺言書って何?

だれでも書ける?

「遺言書」と言えども、一つの法律行為になりますから、「民法」という法律に事細かに規定されています。まず、一般的には「遺言(ゆいごん)」と言いますが、法律用語では、「いごん」と言います。もし「遺言」を「いごん」とさりげなく言う人がいたら、弁護士、司法書士、行政書士、あるいは大学の法学部出身者の人だと思って間違いないでしょう。

その「遺言」は、「法律行為」の中でも「単独行為」、「要式行為」になります。「単独行為」とは、相手が必要ではなく自分一人で行う行為ということです。例えば、物を売り買いする「売買行為」は、必ず売り手と買い手があって成立します。しかし「遺言」は、たとえ誰かに自分の財産を譲りたいと思っても、その人の「承諾」は必要ありません。遺言する人の意思で勝手にできるということです。また「要式行為」とは、一定の形式に従う必要があるということです。そのために、民法で事細かに決められています。要件に一つでも不備があれば、全て無効となってしまいます。
 
遺言の作成を未成年はできないと思っている人がいますが、そのようなことはなくありません。以下に掲げる人は、誰でもできます。

➀未成年(15歳以上)
➁被保佐人
➂被補助人

未成年とは、もちろん20歳未満の人です。被保佐人とは、意志能力(物事の判断能力)が弱いということを家庭裁判所から審判を受けた人のことです。売買以外の特定の行為については、補佐人が代理で行います。被補助人とは、意志能力が少し弱いと家庭裁判所から審判を受けた人です。特定に行為については、補助人の同意が必要だったり、補助人が代理で行ったりします。未成年、被保佐人、被補助人は、自分の意思によって単独で、遺言書を作成することができます。

また、意思能力がない成年被後見人の場合は、基本的に遺言書の作成ができません。しかし、意思能力が回復していれば、作成ができます。ただし、その際には、作成当時の医師の診断などが必要になってきます。
 

内容は何でもいい?

遺言書の形式については、民法で細かく規定されていますが、内容については特に規定はありません。ですから、何を書いても基本的に自由だということになりますが、主に次の3つを記載することがほとんどです。
  
1つ目は、「相続に関すること」です。通常であれば、配偶者に財産の2分の1が相続されますが、あえてその割合を変更したり、あるいは相続人の誰かに相続させない旨を記載したりすることができます。
  
2つ目は、「財産の処分に関すること」です。一定の財産を相続人以外に贈ったり、預貯金を団体に寄附したりする旨を記載できます。本来、遺言書がなければ相続人以外に財産が渡ることはありませんが、遺言書を残すことで、それが可能になります。

3つ目は、「身分に関すること」です。例えば、婚姻届けを出していない夫婦の間にできた子どもを認知するなどの意思を記載する場合です。
  

「遺言書」の種類は?

「自筆証書遺言」とは?

「遺言書」には、主に3種類あります。まず「自筆証書遺言」ですが、3つの遺言書の中で最も手軽で一般的な遺言だと言えます。特徴は、何といっても内容を他人に知られることなく、自分一人で作ることができるという点です。ただ、手軽なだけに要件が厳しく規定されていて、例えば遺言者が全文・日付・氏名を自分で手書きした上で捺印するなどの要件が揃っていなくてはいけません。

「公正証書遺言」とは?

2つ目の「公正証書遺言」は、最近作成する人が増えている遺言書です。公証役場にいる公証人に依頼をして、自分の意思を伝えて、作成してもらうものです。作成した遺言書を遺言者と証人に読み聞かせ、間違いがないかを確認した上で、公証役場に保存します(控えは遺言者に渡す)。偽造などの恐れがなく、法的にも間違いがない遺言書ですが、費用がかかります。

「秘密証書遺言」とは?

3つ目は、「秘密証書遺言」です。遺言者が遺言書に署名・捺印して封書に入れ、捺印した印鑑で封印し、その後公証人と証人(2人以上)に封書を提出し、封紙に捺印してもらうものです。つまり、遺言書の内容は他人に知られることなく、遺言者が書いたものだということだけを第三者に認めてもらうものです。遺言の内容は秘密にできる反面、その内容について不備が生じる可能性が出てきます。

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福岡 學
 熊本県出身。福岡大学法学部法律学科卒。現在、福岡市で行政書士事務所を開業しています。相続・遺言、民事法務(内容証明・契約書・離婚協議書等)、公益法人などが専門分野です。また過去に、福岡県内の大手学習塾で20年間国語・英語の教科指導を担当し、国語科副主任、教務主任などを歴任しました。身近な法律問題、教育問題について、専門知識、過去の経歴を活かし、丁寧で分かりやすく説明いたします。

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