意外と多い!「遺言書」のトラブル(自筆証書遺言編)

      2016/08/17

「終活ブーム」に乗って、保険会社や自治体等でも「終活セミナー」が行われています。その中で、「自筆証書遺言の書き方」を指導している所もあります。「公正証書遺言」に比べて手軽で、値段がかからないというメリットはありますが、作成の際に十分注意をしないとせっかくの「遺言書」が無効になってしまいます。今回は、「自筆証書遺言」で注意すべきこと、要件を説明します。

自筆証書遺言で多いトラブルとは?

遺言書が複数見つかったら?

「自筆証書遺言」の作成は費用がかからず手軽であるため、毎年大晦日に作り直すという人が増えています。当然、前年に作った「遺言書」は無効になりますから、自分で破って捨てるなどして、破棄しなければなりません。しかし、以前自分が書いた「遺言書」の場所が分からず、そのままに複数の「遺言書」が存在している例があるかも知れません。

「自筆証書遺言」の場合、日付を記すことが、遺言書の成立要件の一つとなっていますから、最新のものが有効な「遺言書」ということになります。但し、最新の遺言書であったとしても、遺言書の要件が一つでも欠けていたら、無効です。従って、正確な言い方をすれば、「『自筆証書遺言』で全ての要件を満たす『最新のもの』」が、有効な遺言書ということになります。

例えば、Aさんが毎年大晦日に「自筆証書遺言」を作成していて、Aさんが亡くなった後、相続人はAさんが書いた3通の遺言書(➀「平成27年作成」、➁「平成26年作成」、➂「平成25年作成」)を発見したとします。通常であれば、最新の➀の遺言書が有効となり、相続人がその遺言書の記載された内容に則って、相続手続きを行うことになります。しかし、➀の遺言書にAさんの「印鑑」が押していなかった場合には、次に新しい➁が有効となります。しかし、➁の遺言書には、一部手書きではなくパソコンで作った箇所があった場合には無効となりますから、➂の遺言書が有効となります。

このように、せっかく作った遺言書なのに、一つでも要件がそろっていないと、無効となってしまいます。そうなれば、結果的に古い遺言書が有効となり、Aさんの意思を十分相続人に伝えきれないことになります。

相続財産の書き漏れがあったら?

「自筆証書遺言」で、全ての要件が揃っていた場合、その遺言書は有効となり、相続人は、遺言書に記載された内容、つまり遺言者の最期のメッセージを尊重する形で、相続手続きを勧めていくことになります。

一般的な遺言書では、遺言者はそれぞれの相続財産について、相続方法(配分等)を記しておくことになります。但し、実際に相続が開始して初めて、遺言者の全財産が判明する場合も多く、遺言書に記載漏れをしている財産も出てくる可能性があります。

ただ、判例等では、たとえ相続財産の記入漏れがあっても、「遺言書そのものは有効である」という見解です。記入漏れの財産は、相続人で話し合って処分を決めればいいのですが、それでもその財産の分与をめぐって、相続人間で紛糾することも考えられます。従って、「自筆証書遺言」を作る際には、相続財産を十分に把握しておく必要があります。一つの方法としては、それぞれの財産について相続方法(配分等)を記載した後に、「右記以外の財産については、○○に相続する」等の言葉を添えることで、トラブルが回避できます。
  

自筆証書遺言の要件とは?

全文を自書すること

「自筆証書遺言」の要件の一つ目は、一言一句全て自分で文字を書くということです。一部でもパソコンやワープロ、タイプで書くことはできませんし、他人に代筆させることもできません。ですから、文字を書くことができない人は、「自筆証書遺言」を残すことは不可能ということになります。

また当然ながら、遺言の内容をテープに録音したり、ビデオに録画したりしたとしても、「自筆証書遺言」の要件を満たしていませんので、遺言としては無効です。ただ、遺言者の思いを家族に伝えるために、テープに録音したり、ビデオに録画したりすること自体は問題ありません。

日付を記入すること

要件の二つ目は日付です。遺言者の自書が必要とされています。日付が必要とされる理由は、2つです。まず、遺言書が作成された時に、遺言者に遺言能力があるかどうかを示す役割です。次に、複数の遺言書が見つかった場合、その前後関係を明らかにして、どれを遺言書として採用するかの判断基準としての役割です。

ですから、日付がない遺言書は無効となります。また、「日付印」を押しただけでは、「自書」と言えませんから、無効となります。

署名をすること

三つ目の要件は、遺言書に、遺言者が氏名を自署しなければならないとされていることです。これは、遺言者の同一性と、遺言が遺言者の意思に基づくものであることを示すためです。

氏名は通常、戸籍上の氏名を自署しますが、遺言者の同一性を確認することが目的ですから、通称、ペンネーム、雅号を自署しても問題ないとされています。

押印すること

最後の要件は、押印です。押印は、原則として遺言者自身がしなければなりません。押印も自署と同様に、遺言者の同一性と、遺言が遺言者の意思に基づくものであることを保証するものだからです。使用する印鑑については、特に規定はなく、実印でも認印でもいいとされています。

また押印する場所は、横書きの場合は氏名の右横、縦書きの場合は氏名の下が通常ですが、特に場所についても規定はありません。

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福岡 學
 熊本県出身。福岡大学法学部法律学科卒。現在、福岡市で行政書士事務所を開業しています。相続・遺言、民事法務(内容証明・契約書・離婚協議書等)、公益法人などが専門分野です。また過去に、福岡県内の大手学習塾で20年間国語・英語の教科指導を担当し、国語科副主任、教務主任などを歴任しました。身近な法律問題、教育問題について、専門知識、過去の経歴を活かし、丁寧で分かりやすく説明いたします。

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