「相続税対策」は決して難しくない!

      2016/11/22

2015年(平成27年)1月1日に、相続税に関する法律が改正されました。この改正によって「基礎控除額」が引き下げられ、以前は「相続税」とは無縁だった家族にも、相続税を納めなければならない可能性が出てきたのです。もちろん、納税は国民の義務ですから、決められた税金は納めなくてはいけません。

しかし、相続が始まる前にできる対策があると聞いたら、きっと興味を持たれることでしょう。今回は、その「相続税対策」をご紹介します。

今から始められる相続税対策とは?(保険編)

生命保険を利用する

生命保険は、被保険者(保険に入っている人)が、亡くなった時、あるいは高度の障害を負った時に保険金が支払われる制度です。被保険者である被相続人が死亡して、相続人が保険金を受け取ると、「みなし相続財産」として相続税がかかります。しかし、生命保険には一定の非課税枠が設けられています。その計算式は、

500万円×法定相続人の数

です。

例えば、夫が亡くなり法定相続人は、妻と子ども3人の合計4人だとします。夫が生命保険に入っていない場合、相続税の控除は、

3,000万円+600万円×法定相続人の数=5,400万円

となります。もし相続財産が8,000万円だった場合、
8,000万円-5,400万円=2,600万円

となり、控除額を超えた「2,600万円」に相続税がかかります。
一方、夫が1,000万円の生命保険に入っていた場合、「非課税枠」が
500万円×4人=2,000万円

となります。従って、相続財産は
8,000万円+1,000万円(保険金)=
=9,000万円

、控除額は
5,400万円+2,000万円=7,400万円

となり、相続税は
9,000万円-7,400万円=1,600万円

の課税されることになります。つまり、生命保険の非課税枠を上手に使うと、かなりの「相続税対策」になるのです。

個人年金保険を利用する

現在各保険会社は、多くの種類の「個人年金保険」を商品化し、多くの人が加入しています。これは、国民年金だけでは、老後の生活が不安だと考える人が多いためです。実は、この個人年金保険も、「受け取り方」を工夫すると有効な相続税対策になるのです。

 基本的に、「個人年金保険型死亡保険」を「一時金」、つまり被保険者が死亡した時点で受け取った場合には、その全額が相続財産に加算されてしまいます。しかし、これを「年金」という形で受け取るようにすると、財産としての評価が下がってしまい、結果的に相続財産全体の額が下がることになります。

詳しく事例を使って、説明いたします。夫が被保険者となって「個人年金保険」に加入しているとします。支払う保険料が総額で「5,000万円」、一時金(死亡時)で受け取れる保険金が「7,000万円」、年金として受け取った場合の総額が「7,500万円」とします。

夫が年金で受け取っていて、残年金存受給期間(年金を受け取れる残りの期間)が20年でなくなったとします。ここで、保険会社が公表している「評価割合(相続財産とみなす割合)」に当てはめてみます。残存年金受給期間が「15年超から25年以下」は「40%」となっていますから、夫の年金の評価額は

7,500万円×40%=3,000万円

となります。つまり、年金として受け取っていたことで、一時金に比べて
7,000万円-3,000万円=4,000万円

も相続財産の評価額が低くなります。

今から始められる相続税対策とは?(贈与編)

生前贈与を利用する

親が子どものために、子ども名義の銀行口座を作り、毎年110万円ずつを預金したとします。贈与税の基礎控除(税金がかからない金額)の110万円を利用した「相続税対策」ですが、もし子どもが自分に贈与されていることを知らなかった場合、税務署は子どもの財産ではなく、親の財産(相続財産)と認定する可能性があります。そうならないために、注意する点は次の3つです。

まず、親子の間であっても「贈与契約書」を作っておくことです。税務署が最も問題にするのは、親も子どもも「贈与」の事実を認識していたかということです。「契約書」という書面に残すことで、それを証明することができます。次に、通帳や印鑑などを子ども自身が所有・保管しておくことです。

さらに、通帳の届出印を親名義以外に印鑑にしておくことです。つまり、客観的に見て、親から子どもにお金が移動していて、そのことを子どもがきちんと認識し、なおかつ通帳やお金の管理をしていたことが分かればいいのです。

なお、より確かな方法として、敢えて「贈与税」を申告するという方法もあります。例えば、親から子どもへ「111万円」を贈与し、110万円の「基礎控除」を超えた「1万円」に対する贈与税「1,000円」を支払いのです。税務署にこの「贈与税」の申告をすれば、確実に証拠が残ります。

「おしどり贈与」を利用する

結婚して20年以上経った夫婦の間で、自宅やその購入資金の贈与があった時は、最高「2,000万円」まで「配偶者控除」が認められる制度があります。これを別名「おしどり贈与」と言います。贈与は、夫から妻、妻から夫のどちらでも構いません。居住用不動産、あるいはそのための購入資金でも認められます。
おしどり夫婦

それ以外にも、いくつか条件があります。まず、贈与の年の翌年3月15日までに夫婦が居住し、引き続き居住する見込みでないといけません。また、土地または借地権だけの贈与を行う場合、家屋の所有者が配偶者または同居している親族でないと認められません。

特別控除を利用する

通常の生前贈与は、年110万円までが「非課税」となりますが、「相続時精算課税制度」を利用すれば、それより高額の特別控除を受けることができます。この制度は、親から子どもへ財産を贈与したときの贈与税を一律20%とし、この贈与税を相続税の「仮払い」とみなすのです。しかも、この贈与には2,500万円の非課税枠が設けられています。

例えば、親が子どもに3,000万円贈与したとします。この贈与は1度に全額行っても、数年に渡っても構いません。控除額(2,500万円)を超えた500万円に、20%の贈与税(100万円)がかかります。納税した100万円が、将来の相続税の「前払い」とみなされます。

そして親が亡くなり相続が開始された時には、相続財産に贈与財産を加えた上で相続税を計算し、算出された子どもの相続税額から、既に納めている贈与税を差し引くことができます。残った金額が実際の納付税額ということになります。

もし、既に納めていた税額の方が高い場合には、余分に支払った額が還付されます。ただし、この制度には、贈与する親が65歳以上であること、贈与される子どもが20歳以上であることですなどの要件があります。

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福岡 學
 熊本県出身。福岡大学法学部法律学科卒。現在、福岡市で行政書士事務所を開業しています。相続・遺言、民事法務(内容証明・契約書・離婚協議書等)、公益法人などが専門分野です。また過去に、福岡県内の大手学習塾で20年間国語・英語の教科指導を担当し、国語科副主任、教務主任などを歴任しました。身近な法律問題、教育問題について、専門知識、過去の経歴を活かし、丁寧で分かりやすく説明いたします。

 - 相続のいろは