おひとりさまの遺産よどこへ行く 黙っていると国家に吸われてゆく

      2016/08/30

実は、おひとり様こそ遺言を書かねばならないといったら、驚くでしょうか。相続人のいない人の財産は、そのままであれば国庫に吸収されてしまう危険性があります。自分の大切な財産を、大切な人へきちんと受け継ぐために、遺産の行方について学んでおきましょう。

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年に400億円の遺産が国庫へ吸い込まれる

国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、日本人男性の生涯未婚率が2010年には20%を突破し、男性の5人に1人が独身の時代に突入しました。女性はおよそ10人に1人の割合です。そして少子化により、夫婦のみの世帯もこれからかなり増加すると予想されます。

そうすると気になってくるのが、「相続人のいない人の遺産はどうなるのか?」ということ。実は何の手も講じないでいると、遺産は全て国家に帰属することになってしまうのです。朝日新聞の報道(※2013年9月22日付)によれば、2012年度にこうして国庫へ入った金額は、なんと375億円!これからもっと増えていくものと予想されます。

財産継承者は甥姪まで

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そもそも、おひとりさまの遺産相続人には誰が考えられるのでしょうか。父母、祖父母がすでにおらず、もちろん子も配偶者もいない場合、兄弟姉妹が法定相続人となります。兄弟姉妹も亡くなっている場合は、甥姪が法定相続人です。

法定相続人として認められているのは甥姪までで、いとこやはとこ、「同居してくれている長男のお嫁さん」、内縁の妻や夫は、遺言書がない限り遺産を受け取ることができません。そう、財産を国庫に明け渡さないために、おひとりさまに必要なのが遺言です。

「おふたりさま」も遺言必須

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もしもあなたが一人っ子だった場合、法定相続人として最後の砦である兄弟や甥姪がいないわけです。もしも配偶者に先立たれたら、家庭で築いてきた財産は国庫のものになってしまいます。それで構わないというならよいのですが、ぜひ財産を分けたい人がいるのであれは、遺言は絶対に必要となります。

最近では、「おひとりさま」に加えて、生涯にわたり子のない夫婦を「おふたりさま」と呼ぶようにもなってきています。「おふたりさま」は、いずれどちらかを亡くし、必ず「おひとりさま」になります。結婚しているからといって安心できません。

おひとりさまの遺産のゆくえ

おひとりさま亡き後、遺産はどのように扱われてゆくのでしょうか。流れに沿って説明しましょう。

家裁が財産の管理人を選任する

相続人がいなくても、本人の死後の財産について「おい!どうなってるんだ?」と言ってくる人はいます。債権者たちです。借金をしている感覚はなくても、ローンを組んでいたり、カード払いをしていたりということはあるでしょう。ほかにも後払いの案件はけっこうありそうです。最後の精算を終えなければなりません。

こういった利害関係のある人か、もしくは検察官の請求により、家庭裁判所は相続財産管理人を選任します。管理人は請求を起こした利害関係者か、誰もいなければ検察官です。

相続人が名乗り出なければ精算後は国庫へ吸収

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相続財産管理人を選任したら、家庭裁判所は相続人捜索の公告を行い、相続人と主張する人があらわれるのを待ちます。一定期間のうちに相続人があらわれなければ、精算を行い、残りの財産は国庫へ帰属してしまうのです。

内縁の妻や夫がいる場合は特別縁故者となれる可能性がある

内縁者は法定相続人になれないので、遺言が残っていなければ遺産を分けてもらうことができません。それでは、ただ指をくわえてみているだけなのでしょうか。それではあまりに切なすぎますね。

相続には、「特別縁故者」という制度が存在します。内縁者に限らず、見守りやお世話を行った近所の人や、生活を手伝った友人なども利用できる制度です。相続人が誰もいない場合、特別縁故者として相続財産分与の申し立てがあれば、生前の寄与分に従って遺産が分配されるのです。

ただ、この特別縁故者となるには、相続人が存在しないことを確定させなければなりません。家裁が相続人捜索の公告を行っている間は申し立てができないのです。公告期間はおよそ6ヶ月、申し立ては公告期間満了から3ヶ月以内です。故人と生計を共にしていた縁故者は、何とか半年あまりを食べつながなければならず、苦しさを感じる人もいるでしょう。

遺言は必須だが、養子縁組が吉となる場合も

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遺言さえあれば、特別縁故者のように長い間待たなくても済みます。ですから、血縁者ではない人に遺産を残そうとするおひとりさまは、口約束をするだけではなくきちんと遺言を残しておかなければなりません。

相続させたい人がハッキリ決まっていて、相手もおひとりさまであれば、その人を養子にするのが一番よいかもしれません。一人だけでも相続人を作っておくことが、確実に死後の財産を守ることにつながります。法定相続は全て戸籍で決まっているので、それを利用するのです。

まとめ

自分の財産が最終的に国庫へ流れていくことを「なんだか嫌だな」と感じるおひとりさまは、まずは遺言書を作成しましょう。そして確実に相続させたいという人がいる場合は、養子縁組をすればバッチリ。誰も文句を言えません。これからどんどん増えてくるおひとりさま、おふたりさまにとって、財産のことは大きな問題です。健康なうちに対策を練っておきましょう。

「相続のいろは」の章で分かりやすく相続を解説しています。

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奥山晶子(おくやま・しょうこ)
奥山晶子(おくやま・しょうこ)
山形県生まれ。冠婚葬祭互助会で2年間働いた後、出版業に従事。出版社の社員時代に日本初の喪主向け葬儀実用誌『フリースタイルなお別れざっし 葬』を発行(不定期)。以後、葬儀や墓について紹介するライターへ。 著書に「葬式プランナーまどかのお弔いファイル」(文藝春秋)「終活」バイブル 親子で考える葬儀と墓 (中公新書ラクレ)などがある。2013年より2年間、「NPO法人葬送の自由をすすめる会」の理事を務める。現在は葬儀や墓についての知識を足掛かりに、介護、相続、遺品整理など終活関連すべてについて勉強・取材・執筆中。

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